建築デジタル分野で、大きな注目を集めているBIM。業務の効率化やコストの削減といったメリットはもちろん、施工期間の短縮や現場のマネジメント分野にまで可能性は大きく広がりつつあります。
今回は、BIMを活用した建築事例をご紹介しながら、BIMのメリットや具体的な活用事例を解説します。
BIMとは?
BIM(Building Information Modeling)とは、コンピューター上で建物を三次元のデジタルモデルで再現する仕組みをいいます。
従来の二次元モデルを三次元に移行するだけにとどまらず、建物の設計図から部品一つまであらゆる情報をデータベース化。サイズや数量、仕様などをシステム上で手早く変更、修正することができ、修正された内容はすべて一括で自動反映されます。
業務の効率化やコストの軽減はもちろん、データ化することで複数の事業者が情報を共有することができ、施工期間の短縮にも繋げることができます。
では、実際にBIMを使った建築物の事例をご紹介していきましょう。
事例1.上海タワー
2016年に完工した上海タワーは、BIMを使った建築事例の代表です。
高さ632mは世界第2位(2021年1月現在)をほこり、その建築は一大プロジェクトとして世界各国の技術者が参加しました。課題となったのが、いかにして技術者同士で情報を共有するかということ。そこで採用されたのが、BIMのソフトウェアRevitです。RevitはAutodesk社が提供するソフトウェアとして世界的シェアをほこります。多言語にも対応しているため、各国の技術者が利用するには最適でした。
また、3Dモデルを使って素早くデータの反映や修正ができるため、作業効率のアップを実現。最終的にBIMを採用したことで従来のタワー建設よりも32%も資材を削減できるなど、コスト面・環境面でも大きなメリットを得ることに成功しました。
参考文献:4社の導入事例から見るBIMのメリットと各社の方向性
事例2.富士山世界遺産センター
2017年に開業した富士山世界遺産センターも、BIMを活用した建築事例の1つです。
富士山世界遺産センターは、逆円錐型の曲線的なデザインが特徴で、木格子と鉄骨を組み合わせることで3次元形状の美しいデザインを生み出しました。この難易度の高いデザインを実現させる要となったのがBIMです。
BIMマネジメントを専門に行う事業者にプロジェクトの打ち合わせ段階から参加してらうことで、BIMモデルの構築や、鉄骨構造と木材の干渉チェック、設備の検証などを実行。それぞれ違うソフトウェアを使用していた、設計者、鉄骨工事業者、木格子工事業者のデータをBIMを使って1つにまとめることで、施工期間やコストの無駄を削減することに成功しました。
参考文献:木材使用の3次元形状!高難度の施工に威力を発揮したBIM
事例3.カンプ・ノウ
BIMを用いることで、日本企業が世界的な建築プロジェクトの受注を勝ち取った事例もご紹介しましょう。
スペインの一部リーグに所属する世界的な人気サッカークラブ「FCバルセロナ」。その本拠地として名高いカンプ・ノウですが、クラブではスタジアムの改修に向けて設計コンペを実施しました。
このコンペを見事勝ち抜いたのが、日本の設計大手・日建設計。日建設計ではBIMを使い、クラブへ対してデザイン(完成図)だけでなく、施工に関する詳細な提案まで含んだプレゼンを行いました。具体的な工期短縮や合理的な工事方法の提案を、BIMを用いて説明。クラブ側から質問に対しても、動画を使って実現可能な内容であることを丁寧に伝えることで、信頼を得て受注を勝ち取りました。
この事例では、BIMが単に建築の設計デザインを効率化するだけでなく、施工そのもののマネジメントに関しても大きなメリットをもたらしてくれることを示唆しています。